ホラー映画【Us(アス)】評価。ネタバレ含む

公開当初、お決まりの『全米震撼』ワードが頻繁に使用され、大々的に宣伝されたホラー映画

【Us】

今回は私の見解で”ホラー映画”として評価しました。

ホラー映画?Us

映画『Us』はホラー映画としては

★★☆☆☆

しかし、風刺映画としては

★★★★☆

映画【Us】はホラー映画ではなく、風刺色の強い映画でした。
視聴者を怖がらせる、不快な気持ちにさせるという事よりも、監督の意思を視聴者に伝える。という主張の強い映画でした。
もちろん、殆どの映画には風刺要素が含まれていますし、風刺映画=面白くない。というわけではありません。

この映画の風刺テーマは『アメリカの貧困層』です。
それを踏まえて、なぜホラーとしてこの評価なのか見ていきましょう。

風刺に力入れすぎた、主張が強い映画…

先程も述べた通り、風刺的主張の伏線を貼る事と、回収作業により、ホラー要素が疎かになっている。
視聴した人はわかると思いますが、冒頭から20分間の得体の知れない気持ち悪さは、この作品への期待感が増す事でしょう。

しかし、それ以降は大した発展はなく、その後は少しバイオレンスな展開が続くだけでした。

日本人の多くは、この映画の伏線に気づけない。

アメリカ映画なので、日本人には馴染みのない固有名詞や、メタフィーが散りばめられています。
視聴中に違和感を覚えることはあっても、その違和感が解消されることは難しいでしょう。

※メタフィーとは

メタフィーとは隠喩の事です。ベースの知識がある前提での言葉の比喩表現。
例えると、
『引き出しの中の聖書を眺める日々が続く。』
これは、アメリカのモーテルの引き出しには、聖書が入っているという知識が無いと理解が出来ない文章です。

伏線やメタフィー

◾️冒頭のハンズ・アクロス・アメリカ

1986年5月25日の太平洋夏時間の正午に、ハンズ・アクロス・アメリカのイベントが始まった[6]。数百万の人々が15分間にわたって手をつなぎ、「ウィ・アー・ザ・ワールド」、「アメリカ・ザ・ビューティフル」、「ハンズ・アクロス・アメリカ」を歌った。

wikipedia -ハンズ・アクロス・アメリカ

Wikipediaには上記のように書いてありますが、これはアメリカの貧困層の為に募金を呼びかけ、募金をした人で手を繋いで地球一周しちゃいましょう。みたいな企画でした。
しかし、結果は大ゴケ。募金は予定していた額よりも大幅に下回り、善人の輪が形成される事はありませんでした。

また、馴染みのない聖書に関する伏線も存在します。

◾️エレミヤ書 11章 11節

作中には『11,11』という数字が頻発します。
英語ではありますが、ダンボールに『エレミヤ書11章11節』などと書かれていたり、pm11:11に何か起こったりと、やたら11:11に関連したものが出てきます。

旧約聖書のお話ですね。
エレミヤ書は世界三大予言書の一つです。
11章11節の内容は、神に従わなかったエルサレムの人々に対し、『お前たちの祈りなど無意味』と神が憤慨する。というものらしいです。

作中で言えば、普通の人々の慈悲は、現れたテザートにとっては無意味。祈っても無駄ですよ。
などの解釈でしょう。

◾️ウサギ

旧約聖書では『汚れた生き物』であるウサギ。
作中では地下の人々の食料であり、食べてはいけない物。
が、新約聖書ではキリストの復活の象徴となる【ウサギ】…

などでしょうか。

風刺テーマとホラーカテゴリが合っていない

私自身、聖書に関して以外の事は、ある程度理解できましたが、冒頭からのアメリカに対する貧困層の訴えと言うことがわかった時点で、寧ろ冷めました。
双方のテーマが相乗効果を生むどころか、むしろ貧困テーマがホラーを殺している。そんな感想を抱いた作品が【Us】でした。

しかしながら、ホラー映画として視聴すると肩透かしを食らうどころか、睡魔にパンチされてKOしますが、伏線映画としてみれば評価は変わります。
いたるところに伏線(風刺要素)が散りばめられており、3回観ても伏線回収を楽しめる事間違いなしです。アクション演出は3流ですが、各シーンの演出やカメラワークはとても素晴らしい作品でした。

まとめ

ホラーを語るなら微妙な評価です。その辺のB級映画と然程変わりません。
しかしながら、中身以上に沢山のメタフィーが散らばっており、『ホラー』というジャンルを使って『貧困問題』を訴える。そんな監督のチャレンジが見受けられる映画でした。

監督ジョーダン・ピールの前作【ゲット・アウト】が面白かっただけに少々残念でした。
この流れだと、監督の次回作も同系統の『風刺ホラー』になる事間違いなしだと思います。

ジョーダン・ピール監督の作品傾向は正直、好みではありません。
前作こそ面白かったですが、何度も指摘している通り、風刺が強すぎます。
また、作品自体は批判するほどつまらない訳では無いのですが、周りの評価ほど秀逸な作品ではありません。
アカデミー賞などの”わかる人には分かる作品”みたいなテクニカルなモノを意識し過ぎている気がします。
貧困をテーマにしたら、その作品について悪評をすること自体がモラル違反だ!と予防線をはっている気がしてなりません。

私のような、一般人は何とでも言えますが、映画作品に関わる著名な方々は難しいでしょう。

以上、私個人の感想でした。

あーだこーだ言いましたが、好みの分かれる作品ですので、一度視聴をお勧めします。
私も2回視聴して今回のような評価といたしました。

最近のホラー映画はMamaが一番怖かったなぁ
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